令和5年 第31問目 行政書士
相殺に関する問題です。
選択肢2を最初に読んだときは、
時効で債権が消滅する前に、
実際に相殺しておかなければならないのではないか
と思いました。
ただ、読み直すと、
「消滅以前に相殺適状にあった場合」
と書かれていました。
相殺適状という言葉の正確な意味は分かりませんでしたが、
相殺できる状態にあったという意味ではないか
と考え直しました。
そうであれば、
時効で消滅する前に相殺できる関係ができていた以上、
後から相殺を認めることもありそうです。
そのため、
選択肢2は正しそうだと判断し直しました。
一方、選択肢5では、
人の生命や身体に損害を与えた加害者が、
被害者に対して持っている別の金銭債権を対象にして、
損害賠償債務を相殺できるとされていました。
ここに違和感がありました。
人の身体に損害を与えて負った賠償責任を、
別の債権があるという理由で帳消しにしてよいのか。
被害者には、損害賠償を別件として支払う必要があるのではないか。
そう考えて、選択肢5を誤りと判断しました。
なぜ止まれたのか
今回止まれたのは、
相殺できる債権があるかだけでなく、その債権を相殺に使わせてよいのか
と考えたからです。
相殺は、互いに同種の債権を持っているときに、
対当額で債権を消滅させる仕組みです。
通常の金銭債権であれば、
実際にお金をやり取りせず、相殺によって処理することもできます。
ただし、どのような債務でも相殺できるわけではありません。
生命や身体への侵害によって生じた損害賠償債務まで、
加害者側から相殺できるとすると、
被害者が現実に賠償金を受け取れない可能性があります。
そのため、この場面では、
債権を効率よく清算することよりも、
被害者に現実の支払いを受けさせることが優先されます。
私は条文を知っていたわけではありません。
ただ、
身体への損害賠償を、別の債権で帳消しにするのはおかしい
という感覚から止まることができました。
戻り先
迷ったら、
「その損害賠償は、帳消ししても良いものなのか?」
に戻ります。
※戻り先は、ご自身が印象に残った言葉に置き換えても使えます。
制度確認
相殺とは、
当事者が互いに同種の債権を持っている場合に、
対当額で債権を消滅させる制度です。
時効によって消滅した債権でも、
時効消滅前に相殺できる状態にあった場合には、
その債権を相殺に使うことができます。
一方で、
人の生命または身体の侵害によって生じた損害賠償債務については、
その債務を負う加害者側から相殺することはできません。
被害者に、現実に損害の填補を受けさせる必要があるためです。