令和5年 第45問 行政書士 記述式
抵当権の物上代位に関する問題です。
Aは、Bに対する貸金債権を担保するため、
Bが所有する建物に抵当権の設定を受け、登記も備えていました。
その後、Bが借金を完済しないまま、
抵当権の対象だった建物が火災によって焼失しました。
建物がなくなったことで、
Bには保険会社Cに対する火災保険金請求権が発生しています。
この場面で、Aが火災保険金から優先的に弁済を受けるために、
どのような手段を取る必要があるかが問われていました。
私は、
保険会社Cに対して、建物に設定された抵当権を根拠に火災保険金を差し押さえ、そこから優先弁済を受ける
と考えました。
方向としては近かったものの、
そもそも建物に付いていた抵当権が、なぜ保険金にまで及ぶのかが分かっていませんでした。
どこでズレたか
抵当権は建物に設定されています。
その建物が火災でなくなれば、
抵当権の対象もなくなったように見えます。
それなのに、抵当権者Aが、
Bと保険会社Cとの間に生じた保険金請求権から回収できるのはなぜか?
ここが最初の引っかかりでした。
火災保険金は、
建物とは無関係に新しく生まれたお金ではありません。
建物が焼失したことによって、
その建物の代わりとして発生した金銭です。
そこで、建物に及んでいた抵当権の効力を、
建物の代わりとなった保険金請求権にも及ぼします。
これが物上代位です。
抵当権が追うのは、焼けた建物ではない
物上代位では、
抵当権者が焼けた建物そのものを追い続けるわけではありません。
建物が、
- 売却代金
- 賃料
- 損害賠償金
- 火災保険金
などの金銭へ姿を変えたとき、
その代替物へ抵当権の効力を及ぼします。
今回であれば、
建物が焼失する
↓
Bに火災保険金請求権が発生する
↓
Aがその保険金請求権を差し押さえる
↓
保険金から優先弁済を受ける
という流れです。
つまり、抵当権は消えた建物を追うのではなく、
建物の代わりに発生した価値を追っています。
なぜ差押えが必要なのか
物上代位をするためには、
保険会社CがBへ保険金を支払う前に、
Aが保険金請求権を差し押さえる必要があります。
保険金がすでにBへ支払われてしまうと、
その金銭はBの一般財産に混ざってしまいます。
そうなると、
「このお金が、抵当権の付いた建物の代わりに発生した保険金である」
と特定することが難しくなります。
そのため、物上代位では、
代替物が債務者へ支払われる前の差押えが必要です。
戻り先
迷ったら、
「担保の目的物が金銭に変わるとき、その金銭は元の物の代わりといえるか?」
に戻ります。
※戻り先は、ご自身が印象に残った言葉に置き換えても使えます。
制度確認
抵当権は、抵当不動産が売却されたり、
滅失・損傷したりしたことによって、
債務者が受けるべき金銭などにも行使できます。
これを物上代位といいます。
今回、抵当権の対象だった建物が火災で焼失したことで、
Bには保険会社Cに対する火災保険金請求権が発生しました。
Aは、この保険金請求権に物上代位し、
火災保険金から優先弁済を受けることができます。
ただし、保険金がBへ支払われる前に、
Aが保険金請求権を差し押さえなければなりません。
記述式では、
・抵当権に基づく物上代位により
・保険金支払前に
・BのCに対する火災保険金請求権を差し押さえる
という要素を入れる必要があります。